動悸


【症例1】

主 訴:上半身の発汗とほてり、足冷、動悸、耳鳴、不眠、抑うつ気分

現病歴:

 X5月から不眠、動悸、耳鳴あり、人と話したくないなど鬱的になった。会社も8月に引退し、ずっと家にいる。内科、脳外科など色々調べたが異常なく、自律神経失調症として心療内科通院中。漢方治療希望で当科受診。

現 症:舌候 淡紅・白苔+・舌質厚い・舌下静脈+脈候 大・硬・緊

    腹候 腹力4/5、前額部が脂でテカテカ光っている。多弁で早口。

経 過:

6/19 気逆、上焦の熱証、解毒証と考え荊芥連翹湯。

6/22 足冷、上半身のほてりも良くなってきた。

7/02 ほてりはかなり薄くなってきた。動悸も耳鳴もほとんど気にならなくなってき

   た。気持ちの落ち込みはあるが、前よりは良い。

7/17 首から上の汗はあるが、前よりは減っている。

8/02 ほてり、発汗はまあまあ落ち着いている。2-3/10程度。気持ち的にも落ち着い

   ている。笑顔あり。


【症例2】

主 訴:動悸

現病歴:

 X-2年に多忙で体を壊してから、精神科でリーゼとマイスリーを貰っている。気圧のせいか、この時期になると動悸がしてくる。X年4/13相談のため受診。

現 症:

 舌候 淡紅、脈候 細・弦、腹候 見ていない

経 過:

4/13 気逆と考え、桂枝加竜骨牡蛎湯を開始。

4/27 動悸は落ち着いてきた。ずっと飲んできたリーゼが全く不要となった。


    動悸の漢方治療


 動悸にも色々な原因がある。

 不整脈、特に心室性期外収縮による動悸には炙甘草湯が奏功するものがある。心因性の動悸には気逆・気鬱によるものが多く、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、半夏厚朴湯、黄連解毒湯などを用いる。更年期女性の不定愁訴による動悸には加味逍遥散を用いることが多い。抑うつ傾向による動悸には、柴胡加竜骨牡蛎湯、加味逍遥散、加味帰脾湯などを用いる。また水滞でも動悸を生じることがあり、苓桂朮甘湯や五苓散などの利水剤を用いる。