【症例1】
主訴:腰痛、左下肢しびれ、倦怠感、冷え、こむら返り、無月経、食後の眠気
現病歴:
腰痛、下肢しびれで整形受診、精査するも異常指摘されず、H24年1/6漢方治療希望で当科受診。月経はH23年3月から止まっている。
現症:舌候 淡紅、脈候 弱・渋、腹候 腹力2/5、腹壁がガチガチ、くすぐったがり ++、腹壁は薄い
【経過】
Day0 気血両虚、寒証と考え、十全大補湯、加工附子末1g3×。
Day15 こむら返りはなり、体も温まり、食後の眠気もなくなった。腰痛、しびれ、 冷えは同じ。
Day49 薬を2週間ほど切らしていた。飲んでいる間は、下肢しびれ、だるさ、冷えは よくなっていた。薬がなくなってからあくびが増えた。紅参末1.2g3×追加。
Day139 2×で飲んでいた。飲まないと凄く疲れてあくびがすごくなる。
Day216 スポーツジムを5-6回/週行けるくらい元気になったが、過労で受診。風邪を 引きやすくなった。ほどほどにするよう養生を指導し、同じ処方を継続とし た。
【症例2】
主訴:五十肩、多汗症、耳鳴、しびれ
現病歴:
50歳より耳鳴出現し、複数の耳鼻科にかかるも治る見込みなしと言われた。55歳より多汗症が著明になり、全身に汗をかき、真冬でも歩くと下着がぬれる、寝ている時も薄着なのに発汗するような状態となった。57歳より肩関節周囲炎で整形外科で関節腔内注射しているがよくならない。漢方治療希望に、H24年3/13当科受診。
現症:舌候 淡紅・厚・舌下静脈怒脹+、脈候 硬・弦、
腹候 腹力4/5・他所見なし、手汗+、色白、肥満、汗がにじんでいる
【経過】
Day0 気逆、上焦の熱証、水滞と考え、黄連解毒湯、柴胡加竜骨牡蛎湯。
Day14 効果なし。桂枝加苓朮附湯、釣藤散へ変更。
Day35 五十肩は若干よい。
Day44 肩の痛みは大分和らいできた。6-7/10くらい。汗は多い。漢方飲むと熱くなるような気がする。耳鳴も不変。手首・足首の痛み、しびれを訴える。腎虚も考え、六味丸、二朮湯。
Day58 肩の良い状態は続いている。しびれはやや改善か。汗、耳鳴は不変。
Day73 肩はずっと良かった。2ヶ月くらい注射打っていない。1週前から痛みが出てきた。肩痛再発と多汗症を目標に防己黄耆湯へ。六味丸は止め。二朮湯は続行。
Day80 肩の痛みが消えた。その日のうちに消えた。汗、耳鳴は不変。
Day98 肩は良い。発汗はわずかに良いかも。尿の回数は増えた。ダイエット希望で、雑誌で見た大柴胡湯を希望。合わないと提言したが、強く希望するため2×で処方。
Day115 大柴胡湯は下痢で止めた。窓を開けて寝ると冷気が入ってきて肩が痛む。手足のしびれが6月になり、ちょっと強くなってきた。疎経活血湯を追加。
Day127 肩は冷気に当たると痛い。四肢しびれは薄らいだ感じ。忘れるようになってきた。効いている気がする。
Day142 肩は冷気にあてないと大丈夫。四肢しびれは波があって、かなりしびれている時もある。漢方の変更を希望。疎経活血湯止めて、加味八仙湯へ。二朮湯と防己黄耆湯はそのまま。
Day156 しびれは6-7/10とかなり改善。忘れられるようになってきた。
【症例3】
主 訴:不眠(中途覚醒)、手足のしびれ
現病歴:
2013年4月から動悸と血圧上昇あり、近医受診、安定剤で軽快した。しかしその後再発し、心療内科受診、心身症と診断され安定剤で軽快。しかしその後効果なくなり抗うつ剤へ変更も副作用(嘔気、眠気)で中止。違う抗うつ剤へ変更も不安が強くなり中止。その後各種安定剤投与されるも効果なく中止。漢方治療を希望され、X年10/25当科受診。「安定剤はもう使いたくない。」
現 症:舌候 淡紅、脈候 硬・実、腹候 3/5・両胸脇苦満±、心下痞+
経 過:
X年年
10/25 気鬱、気逆と考え、半夏厚朴湯3×、柴胡加竜骨牡蛎湯3×、酸棗仁湯2×。
11/10 少し眠れるようになってきたがまだ途中で起きる。しびれも3/10まで減少。
12/22 睡眠は良くなってきた。しびれは若干残っている程度。
2013年
01/22 夜は結構眠れるようになってきた。しびれ3/10。終診。
しびれは漢方では、気血両虚、とりわけ血虚が原因と考えられている。したがって治療は補血剤を用いるわけだが、代表的処方としては、四物湯をベースとした疎経活血湯、芎帰調血飲、加味八仙湯(煎じ)などが挙げられる。エキス剤では疎経活血湯がファーストチョイスとなるが、煎じ薬の加味八仙湯はしびれの聖薬と言われているので、処方可能な環境であれば試してみる価値がある。ほとんどの生薬が保険が適応されるのでご希望の方はご相談していただきたい。また、腎虚がしびれの原因となっていることもある。糖尿病性の末梢神経障害によるしびれに八味地黄丸(八味丸)や牛車腎気丸を使うのは有名な話である。他に烏薬順気散、五積散、萎証方、続命湯などを使うことがあるとされている。