【症例1】
主訴:五十肩、多汗症、耳鳴、しびれ
現病歴:
50歳より耳鳴出現し、複数の耳鼻科にかかるも治る見込みなしと言われた。55歳より多汗症が著明になり、全身に汗をかき、真冬でも歩くと下着がぬれる、寝ている時も薄着なのに発汗するような状態となった。57歳より肩関節周囲炎で整形外科で関節腔内注射しているがよくならない。漢方治療希望に、X年3/13当科受診。
現症:舌候 淡紅・厚・舌下静脈怒脹+、脈候 硬・弦、
腹候 腹力4/5・他所見なし、手汗+、色白、肥満、汗がにじんでいる
【経過】
Day0 気逆、上焦の熱証、水滞と考え、黄連解毒湯、柴胡加竜骨牡蛎湯。
Day14 効果なし。桂枝加苓朮附湯、釣藤散へ変更。
Day35 五十肩は若干よい。
Day44 肩の痛みは大分和らいできた。6-7/10くらい。汗は多い。漢方飲むと熱くなるような気がする。耳鳴も不変。手首・足首の痛み、しびれを訴える。腎虚も考え、六味丸、二朮湯。
Day58 肩の良い状態は続いている。しびれはやや改善か。汗、耳鳴は不変。
Day73 肩はずっと良かった。2ヶ月くらい注射打っていない。1週前から痛みが出てきた。肩痛再発と多汗症を目標に防己黄耆湯へ。六味丸は止め。二朮湯は続行。
Day80 肩の痛みが消えた。その日のうちに消えた。
急性期は葛根湯、慢性期は二朮湯や桂枝加朮附湯、桂枝加苓朮附湯、葛根加朮附湯を用い、必要に応じて芍薬甘草湯を合方する。肩こりが強い実証の場合は大柴胡湯などの柴胡剤を、また血虚の場合は四物湯や五積散を用いることもある。
関節痛についての解説もご参照いただきたい。