関節痛


【症例1】

主 訴:左下肢痛、腰痛

現病歴:

 X8月から主訴で整形外科受診。座骨神経痛と診断され、鎮痛剤投与とプロック注射の治療を受けていた。しかし痛みがなかなか改善しないことから、漢方治療目的に、X+11/6当科受診。

現 症:舌候 淡紅、脈候:沈・渋、腹候:見ていない

【経過】

Day 0 腎虚を考え八味丸を開始。

Day21 足腰の痛みは徐々に良くなってきた。

Day43 疼痛続き、ボルタレンSP50を日に3回使っている。八味丸止めて、牛車腎気丸とした。

Day46 Day45から疼痛がなくなってきた。1-2/10程度まで改善している。

Day54 牛車腎気丸飲んでから調子が良い。

Day230に至まで、一度も主訴を訴えていない。


【症例2】

主 訴:左肩の冷えと痛み

現病歴:

 3,4年前に玄関で転倒しむち打ちを受傷。その後から主訴が続いている。X10/31当科受診。

現 症:舌候 淡白・厚・歯痕跡±、脈候:硬・渋、腹候:診ていない

    肩痛は温めると良くなる、手は普段から冷たい、人の倍汗をかく

【経過】

Day 0 寒証 、表虚と考え、桂枝加苓朮附湯。 

Day 58 左肩痛多少良い。漢方が効いている感じがする。風呂で温めると更に良くなる。

Day 92 左肩が冷たいのも少し良い感じ。寒いと痛くなる。

Day129 左肩の冷えと痛みは5/10まで大分改善した。前は眠れないくらい冷たかった。

Day189 左肩痛は大分良い。冷えも取れた。

Day279 桂枝加苓朮附湯飲んでから、胃腸の調子が良くなり、肩も痛くなくなった。


【症例3】

主訴:頻尿・関節痛

現病歴:

 前医で、頻尿、ドライアイ、下痢症、不安神経症で漢方治療受けていた。遠方のため当科へ紹介。現在は、起床時に手指のこわばりと下肢、背中の痛みがある。リウマチ専門クリニックでは異常なかった。

現症:

 舌候 淡紅・舌下静脈++、脈候 沈・弦、腹候 腹力3/5、心下振水音±

経過:

07/10 頻尿に対しては前医薬の清心蓮子飲が著効していたためこれを継続し、関節痛

   に対しは桂枝加苓朮附湯を1ヶ月処方。

10/29 久々の受診。桂枝加苓朮附湯飲んでから、毎朝あった手指の痛み、むくみ、こ   わばりがなくなった。


   関節痛の漢方治療


 関節炎による関節痛の早期は、越婢加朮湯、薏苡仁湯、麻杏薏甘湯、桂枝二越婢一湯などの麻黄剤を用いる。中後期は利水剤や補剤を用いることが多い。すなわち、利水剤としては、防己黄耆湯、越婢加朮湯、桂枝加苓朮附湯、当帰芍薬散などで、補剤としては、疎経活血湯、十全大補湯、桂芍知母湯、大防風湯などを用いる。芍薬甘草湯はこれらと組み合わせて用いる場合もある。他に五積散など。特に下半身の疼痛には八味丸(八味地黄丸)や牛車腎気丸を用いることがある。