【症 例】
主 訴:肛門と陰嚢の間が痛い、触診後の疼痛が続いている
現病歴:
近医泌尿器科で前立腺炎と診断で投薬を受けたが効果ない。また転移性肝腫瘍があり、現代薬は肝臓に負担がかかるので漢方治療希望にX年2月当科受診。
現 症:舌候 淡紅、脈候 硬・実、腹候 2/5
経 過:
X年
02/02 竜胆瀉肝湯(薛氏)
02/08 痛みは4/10まで改善。3-4日で効いてきた。体調も良くなっている。
慢性前立腺炎は、急性期と慢性期に分けられ、さらにカテゴリーⅠ〜Ⅳに分類される。急性期は細菌感染によるものが多く、診断と治療は比較的容易とされているが、慢性期になると非細菌性であり診断と治療は比較的難しいとされる。現代医学的治療としては、急性期は抗生剤だが、慢性期になると、αブロッカー、抗コリン薬、前立腺マッサージなどの理学療法などの他に、向精神薬や簡易精神療法などの心因的なアプローチも必要な場合がある。また増悪因子である、寒冷、長期座位、不規則な生活の回避や温浴、運動などの奨励も挙げられているが、泌尿器科においては難治性疾患の一つとされている。
慢性前立腺炎の治験は少ないため、成書や文献を参考にまとめるとおおよそ以下のようになる。
慢性前立腺炎は、寒冷、瘀血などが発症のベースになることがあるため、寒冷に対ては温補する、瘀血に対しては同じ姿勢を続けないなどの心得が重要とされる。したがって、本治法として、駆瘀血剤、温熱剤、柴胡剤を投与しながら、炎症と腫脹の度合に応じて、標治法として今回用いたような竜胆瀉肝湯などの清熱利水剤をそれぞれ併用するか単独で用いるか、の選択となる。
具体的には以下のようになる。
本治法:桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、真武湯、八味地黄丸、 小柴胡湯
標治法:竜胆瀉肝湯、猪苓湯、五淋散、清心蓮子飲