疲労倦怠感


【症例1】

主訴:腰痛、左下肢しびれ、倦怠感、冷え、こむら返り、無月経、食後の眠気

現病歴:

腰痛、下肢しびれで整形受診、精査するも異常指摘されず、H241/6漢方治療希望で当科受診。月経はH233月から止まっている。

 

現症:舌候 淡紅、脈候 弱・渋、腹候 腹力2/5、腹壁がガチガチ、くすぐったがり   ++、腹壁は薄い

【経過】

Day0 気血両虚、寒証と考え、十全大補湯、加工附子末1g3×。

Day15 こむら返りはなり、体も温まり、食後の眠気もなくなった。腰痛、しびれ、   冷えは同じ。

Day49 薬を2週間ほど切らしていた。飲んでいる間は、下肢しびれ、だるさ、冷えは   よくなっていた。薬がなくなってからあくびが増えた。紅参1.2g3×追加。

Day139 2×で飲んでいた。飲まないと凄く疲れてあくびがすごくなる。

Day216 スポーツジムを5-6/週行けるくらい元気になったが、過労で受診。風邪を   引きやすくなった。ほどほどにするよう養生を指導し、同じ処方を継続とし    た。


【症例2】

主 訴:疲労倦怠感、発汗過多

現病歴:

 元来気虚、寒証 で六君子湯の証だが、仕事が多忙な上に、両親の介護の末の父親の他界で疲労倦怠が極まり、異常に発汗する状態となった。仕事から帰宅すると疲労のあまりすぐにソファーに寝てしまう生活。

現症:舌候 淡紅・歯痕跡±、脈候 細・弱、腹候 見ていない

   色白、体格大、皮膚は湿潤

経過:

7/21 それまで加味逍遥散、当帰芍薬散加附子、六君子湯加紅参を内服していた。こ   れに黄耆末2g3×を追加。補中益気湯を考えたが、同じ柴胡剤の加味逍遥散は発   汗に一定の効果があるとのことで補中益気湯は見送った。

 8/18 疲れがとれず夏バテ気味。しかし黄耆を内服2日目から、ソファーに寝なくな   り、発汗も著明に減り疲れなくなってきた


【症例3】

主 訴:肩こり、倦怠感、眼精疲労

現病歴:

 中学生頃から肩こり、倦怠感、眼精疲労が続いている。ずっとマッサージに通っているがあまり効果がない。最近鍼灸治療をはじめたら少し良いようだ。夜間に歯を食いしばっていることがわかり、歯科でマウスピースを作ってもらい少し改善している。漢方治療希望で当科受診。ストレスはそんなにない。

現 症:舌候 淡紅・歯痕跡+、脈候 弦、腹候:4/5・心下振水音+

経 過:

02/12 気鬱、水滞と考え、柴朴湯、五苓散。いずれも3×。

02/26 肩こり、倦怠感、眼精疲労がとても良くなった。10段階の2/10まで改善

03/19 肩こりは漢方を飲まないとだめな感じ。漢方飲むと1日で良くなる。


【症例4】

主 訴:倦怠感、舌が荒れて痛い、味がしない

現病歴:風邪で受診。同時に大分前からある主訴も訴えられた。

現 症:舌候 紅・縦の裂++・鏡面、脈候 硬、腹候:見ていない

経 過:

X

04/02 陰虚舌と考え、人参湯。

04/12 舌の状態は良くなってきた。

05/26 食欲も出てきた。

06/09 調子が良い。

07/10 人参湯飲んでから体調が良くなり、疲れなくなった。栄養ドリンクを飲

   まなくてよくなった。

07/24 人参湯で今年は夏バテしていない。

09/04 今年の夏は暑かったが、今年は珍しく夏バテしなかった。今年が一番楽

   だった。


【症例5】

主 訴:夏バテ、頭痛、倦怠感

現病歴:

 夏になり夏バテしてきた。漢方治療希望で当科受診。

現 症:舌候 淡紅、脈候 硬、腹候:見ていない

経 過:

X年

08/29 補中益気湯を開始。

10/26 内服後、夏バテ、倦怠感は改善していた。


【症例6】

主 訴:疲れやすい、風邪引きやすい

現病歴:歳のせいか、疲れが抜けなくなり、風邪も引きやすくなった。

現 症:舌候 淡紅、歯痕跡+、脈候 弦、腹候:見ていない

経 過:

X

04/10 補中益気湯を開始。

05/08 疲れなくなった。栄養ドリンク欲しくなくなった。大分アクティブに動け

   るようになった。

06/19 疲れはない。

07/19 疲れも一晩寝るととれるようになった。


【症例7】

主 訴:疲れやすい

現病歴:どういうわけか、最近疲れやすい。

現 症:舌候 淡紅、脈候:硬、腹候:見ていない

経 過:

X

10/02 補中益気湯を開始。

11/01 補中益気湯で疲れとれる。

12/03 補中益気湯で倦怠感は大分良い。ほとんど疲れを感じなくなり、除雪して

   も疲れなくなった。


【症例8】

主 訴:だるい、疲れがとれない

現病歴:出産後主訴を感じるようになった。

現 症:舌候 淡紅、脈候 平・弦

経 過:

X

03/31 補中益気湯を開始。

05/01 補中益気湯飲んで凄く良い気がする。症状は10段階の3/10まで改善、飲んだ   ら気力がわいてきた。


【症例9】

主 訴:だるい、こわい、食欲ない

現病歴:徐々にからだがだるくて、こわい、こわいと言うようになった。

現 症:舌候 淡紅、舌下静脈+、脈候 硬、腹候 見ていない

経 過:

X

09/26 補中益気湯

10/06 補中益気湯飲むと調子良くなる。

10/26 食欲出てきた。


  疲労倦怠感の漢方治療


 ファーストチョイスはなんといっても補中益気湯であろう。倦怠感の主体は気虚と考えられ、人参湯、四君子湯、六君子湯、十全大補湯、小建中湯そして補中益気湯などの補気剤を主体に使うことになる。

 また気鬱が原因の場合は、半夏厚朴湯、柴朴湯、加味逍遥散、香蘇散などの理気剤が必要となる。

 他に、真武湯や八味地黄丸などを用いることもある。