【症例1】
主訴:全身倦怠感、強い疲労感、発汗過多
現病歴:
数年前から月経困難症、胃腸障害、易疲労性に対し、当帰芍薬散、加味逍遥散、六君子湯、加工附子、紅参で良好に経過していた。ご両親の看病で疲労がピークに達し、H24年7/21当科受診。とにかく疲れていて、帰宅後ソファーに座るとそのまま朝まで寝てしまう日が続いている。とにかく汗をかく。
現症:舌候 淡紅・歯痕跡+、脈候 細・弱、腹候 見ていないが体格大、色白、ぽっちゃり、汗がにじんでいる。
【経過】
Day0 加味逍遥散を止めて補中益気湯も考えたが、加味逍遥散は汗に効果があるとの ことなので、黄耆末2g3×だけ追加した。
Day28 黄耆は2日で効いた。ソファーに寝なくなり、発汗も著明に減った。だが、 まだ疲れは完全にとれずに、夏バテ気味ではある。そのまま継続とした。
【症例2】
主 訴:盗汗
現病歴:ずっと前から毎朝3-4時になると汗で起きる。
現 症:舌候 淡紅・裂++・歯根±、脈候 細・沈・渋、腹候 見ていない
経過:
X年
10/24 心脾両虚と考え加味帰脾湯で開始。
11/19 盗汗は続く。気血両虚と考え十全大補湯1×寝る前を追加。
12/17 盗汗治った。体調も良い。加味帰脾湯も2×に減らす事ができた。
X+1年
2/21 すごく調子が良い。それまであった抑うつ傾向もなくなったとのこと。
【症例3】
主 訴:上半身の発汗とほてり、足冷、動悸、耳鳴、不眠、抑うつ気分
現病歴:
X年5月から不眠、動悸、耳鳴あり、人と話したくないなど鬱的になった。会社も8月に引退し、ずっと家にいる。内科、脳外科など色々調べたが異常なく、自律神経失調症として心療内科通院中。漢方治療希望で当科受診。
現 症:舌候 淡紅・白苔+・舌質厚い・舌下静脈+、脈候 大・硬・緊
腹候 腹力4/5、前額部が脂でテカテカ光っている。多弁で早口。
経 過:
6/19 気逆、上焦の熱証、解毒証と考え荊芥連翹湯。
6/22 足冷、上半身のほてりも良くなってきた。
7/02 ほてりはかなり薄くなってきた。動悸も耳鳴もほとんど気にならなくなってき
た。気持ちの落ち込みはあるが、前よりは良い。
7/17 首から上の汗はあるが、前よりは減っている。
8/02 ほてり、発汗はまあまあ落ち着いている。2-3/10程度。気持ち的にも落ち着い
ている。笑顔あり。
【症例4】
主 訴:発汗過多、疲労倦怠感
現病歴:
元来気虚、寒証 で六君子湯の証だが、仕事が多忙な上に、両親の介護の末の父親の他界で疲労倦怠が極まり、異常に発汗する状態となった。仕事から帰宅すると疲労のあまりすぐにソファーに寝てしまう生活。
現症:舌候 淡紅・歯痕跡±、脈候 細・弱、腹候 見ていない
色白、体格大、皮膚は湿潤
経過:
7/21 それまで加味逍遥散、当帰芍薬散加附子、六君子湯加紅参を内服していた。こ れに黄耆末2g3×を追加。補中益気湯を考えたが、同じ柴胡剤の加味逍遥散は発 汗に一定の効果があるとのことで補中益気湯は見送った。
8/18 疲れがとれず夏バテ気味。しかし黄耆を内服2日目から、ソファーに寝なくな り、発汗も著明に減り疲れなくなってきた。
【症例5】
主 訴:微熱、発汗、盗汗、足冷
現病歴:
高脂血症で治療中。X年11/27から主訴出現。平熱は35度台だが、ずっと36.5度で推移している。体全体に汗をかき、朝起きると上半身に汗をかいている。
現症:舌候 淡紅、脈候 硬、腹候 見ていない、痩せ型
経過
12/4 虚証、気逆と考え、柴胡桂枝乾姜湯。
12/5 今朝は10日ぶりに汗をかかなかった。感激したと述べられる。
覚醒している時の発汗は、表虚と考え黄耆が配剤された桂枝加黄耆湯、黄耆建中湯、防已黄耆湯、補中益気湯、玉屏風散などを用いる。津液の虚した陰虚証の場合は当帰六黄湯、首から上の汗は実証なら茵陳蒿湯、虚証なら柴胡桂枝乾姜湯、夏バテの汗は清暑益気湯を用いる。
寝ているときの発汗(寝汗、盗汗)は、それだけで虚証と捉えられるので、黄耆建中湯、補中益気湯、柴胡桂枝乾姜湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、不換金正気散(盗汗何としても止まないもの)などを用いる。
また虚熱(真寒仮熱)による重症患者の脱汗の場合は四逆湯、茯苓四逆湯を用いる。傷寒論の条文にある『大いに汗出でて、熱去らず、内拘急し、四肢疼み、而して悪寒する者は四逆湯之を主る。」に従う。