【症例1】
主 訴:頭痛、めまい、食欲不振、嘔気、胃の調子が悪い、緊張しやすい
現病歴:
1ヶ月くらい前から頭痛があり、休みになると酷くなる。パソコンを見ていると頭痛とめまいがする。2年前から胃の調子が悪く食事量も減った。緊張しやすい。
現 症:舌候 淡紅、歯痕跡±、脈候 細・弱・弦、腹候 2/5、両胸脇苦満+
両腹直筋+
経 過:
04/18 気虚、気鬱、腹証から柴胡桂枝湯を選択。
04/25 頭痛、眩暈、嘔気が5/10くらいまで良くなった。前回より軽減されて楽になってきた。
【症例2】
主 訴:頭痛、肩こり、疲れやすい
現病歴:
主訴あり脳外科でMRIを撮ったが異常なく、筋緊張性頭痛と言われた。職場ではずっと座ってパソコンを見ている。仕事上のストレスもある。
現 症:舌候 淡紅、脈候 弦、腹候 3/5・両胸脇に苦満はないが抵抗あり++
経 過:
03/26 肝気鬱結、気鬱と考え柴朴湯を選択。
04/15 頭痛改善してきた。薬なくなってきて朝しか飲んでいなかったら少しずつ頭痛してきた。続服とした。
04/23 漢方で調子が良いです。主訴は2/10まで改善。
05/21 頭痛はすごく良いです。ほとんどなくなりました。
VDT症候群とはVisual Display Terminal syndromeの略称です。つまりパソコンなどの画面を長時間見続けることで生じる障害の総称です。VDT症候群の症状は主に、眼精疲労、筋肉疲労、精神疲労3つに分類されます。このため、現代医学では症状に応じて眼科や整形外科、精神神経科などを受診することになりますが、症状がすべてにまたがっている場合はどこに行って良いのかわからない、医者にとっても自分の専門外の症状は見れないので、あちこちの科を併診することになってしまいます。総合的に把握する医者がいない事態に陥りやすい疾患と言えるでしょう。
眼精疲労の症状としては目の疲れや霞み、筋肉疲労では肩こり、頭痛、精神疲労では軽いうつ症状や神経症症状が特徴とされています。根本治療としては、パソコンを操作することを止めるか、時間を減らすかになりますが、仕事上で使っている場合が多いので、パソコンを生活から取り除くことが不可能な方がほとんどです。
漢方的には、超時間におよぶモニター凝視による眼精疲労および精神疲労は肝気鬱結と捉え、柴胡剤や理気剤を選択します。具体的には柴胡桂枝湯、柴朴湯、四逆散、抑肝散や柴胡加竜骨牡蛎湯などです。また過剰なキータッチによる頚、肩、腕の筋肉疲労は瘀血と捉え、駆瘀血剤を選択します。具体的には桂枝茯苓丸、桃核承気湯、通導散などです。
VDT症候群は社会生活が病因に密接に絡んでいるので、社会生活を継続しながらの治療になるため、医師も患者もライフスタイルの改善を相談しながら忍耐強く治療していくことが肝要です。長期的には、健康被害を作らないような、そういった職場作りや社会そのものの変革が必要です。