【症例1】
主 訴:両手のしもやけ、四肢の冷え
現病歴:幼少時から主訴がひどく、冬になると毎年生じる。
現 症:舌候 淡紅、脈候 平・硬・弦 腹候:腹力2/5、臍上動悸++
経過:
X年
01/25 当帰四逆加呉茱萸生姜湯、紫雲膏。
02/22 内服後1週間から指が曲げられるようになってきた。痛みも感じなくなって
きた。傷も治ってきた。体も四肢も温まってきた。
03/29 しもやけはまだ治っていない。厳冬期よりも季節の変わり目の時の方がな
りやすい。冷えは感じなくなった。
【症例2】
主 訴:しもやけ、足の冷え
現病歴:
X年11月頃から足が冷たい。しもやけもできてきた。3〜4年前からこの時期になると毎年なる。毎年11月に始まり5月頃に治る。とにかく足が冷たい。
現 症:舌候 淡紅、脈候 硬・渋、腹候 3/5・心下振水音+・臍上〜臍中悸+、
足冷+++
経過:
X年
01/31 当帰四逆加呉茱萸生姜湯。
02/19 足冷はあるが、少し良い気がする。10段階の8-9/10くらいまで改善。寝る前
に足をマッサージしないとどうしようもない感じだったが、それがちょっと良
くなってきた。八味丸追加。
03/08 指先の冷たさが改善している。前は夜寝るときにこすらないと我慢できな
かったが、今はあまり気にしないで眠ることができる。
04/22 冷えは5/10。足趾先のしもやけはまだ小さいのはある。手も温まった。
06/07 冷えは2-3/10。冷えが苦にならなくなった。
08/01 冷えはない。しもやけも消えた。
凍瘡は冷えによる末梢の血流障害により、機能的な変化が、後に器質的な障害へと変化して生じると考えられている。漢方では、この血流障害を瘀血と考え、桂枝茯苓丸に代表される駆瘀血剤を用いる。しかし、ベースに冷えがあるため、冷えの原因を正しく弁証し、証に従った方剤を選ぶ必要がある。冷えの原因は5つに大別されるが、これは「冷え症」の頁に譲る。
凍瘡のファーストチョイスは、当帰四逆加呉茱萸生姜湯があまりにも有名だが、次に使われるのが当帰芍薬散であろうか。いずれにしても四物湯類を外すことはできないであろう。他に、温経湯、真武湯、人参湯、桂枝加(苓)朮附湯などを用いる。