慢性湿疹


【症例1】 

 X-1年6月から手荒れが続いていると受診。皮膚科でステロイド外用治療を受けていたが、止めると再発の繰り返しで皮膚が薄くなってきたので中止。漢方治療希望でX年2月受診。

【漢方診断】

気虚、血虚、瘀血、皮水、肝気鬱結と弁証し、桂枝茯苓丸越婢加朮湯十全大補湯加黄耆を投与。2週後には皮膚剥離、脱落、発赤は著明に改善。痒みは残存するものの自制内となった。

 

写真左側は初診時、右側は2週間後の状態。証の診断が適切であれば、こういった慢性難治性疾患でも2週間で効果を現すこともある。

【考察】

 著しい皮膚剥離、脱落は深刻な血虚と考え十全大補湯を選択。黄耆は湿潤を取るのと皮膚修復を促す目的で加味した。慢性難治性で長引く状況と舌下静脈怒張および下腹部の広範な圧痛点と一部苔癬化局面を瘀血と考え桂枝茯苓丸を選択。手指全体がむくんだ感じと時にジクジク浸出液が出るとの訴えより水滞、特に皮水と考え越婢加朮湯を選択した。越婢加朮湯には利水の他にも石膏による清熱・抗炎症作用も期待した。本来であれば清熱剤も選択肢に入るが、中間証からやや虚証で、血虚が深いことよりまずは補剤中心から投与する方が無難と判断したため用いなかった。

 投与後2週間で良好な経過が見られ、弁証の方向は概ね合っていたと思われる。今後経過を見ながら、清熱剤や柴胡剤の併用も視野に入れながら治療にあたる必要があるかもしれない。


【症例2】

主 訴:右手の手荒れと発赤(人差し指、中指、薬指)、冷え症

現病歴:

1ヶ月前から主訴出現。ハンドクリーム塗るとぴりぴりして真っ赤になる。X-5年に同様の症状あり、皮膚科で治療を受けたが良くならなかった。漢方治療希望で当科受診。

現 症:舌候 淡紅、脈候 弦、腹候 2/5・心下振水音++、臍上悸+

    足冷+、手汗±、口唇に瘀斑+

経 過:

X

03/08 脾虚、瘀血、血虚、水滞、寒証と考え、当帰四逆加呉茱萸生姜湯。

03/29 手の湿疹は数日で良くなってきた。冷え症も10段階の5/10に改善。


慢性湿疹の漢方治療には以下のように証に随って治療する。